第15章 おとぎのくにの 7
「2人の気持ちが落ち着いたら、これからのことを一緒に考えよう」
お父さまは私の頭を撫でながら、当たり前みたいにそう言ったけど、それは私にとってすごく大きなことだった。
“これからのこと”
それはきっと、この先の私たちの人生のことで。
どこで、どうやって、何をして、どんな立場で生きていくのか。
私が不安に思っていたことを、お父さまもちゃんと考えてくれていたと分かって安心する。
「焦る必要はない、先のことは時間を掛けてゆっくり考えていけばいいんだ。人生は長いんだから」
お父さまはお茶目にパチンとウインクした。
たぶんあまり深刻な空気にならないように、敢えて軽く伝えてくれたんだと思う。
お父さまの言葉で私の中の不安が小さくなったのが分かる。
完全に消えてはいないけど、だいぶ気が楽になった。
ホッと息を吐く私をお父さまは腕を広げて抱きしめた。
私の腕の中にはまだカズがいたから、もれなくカズもお父さまに抱きしめられることになって。
カズは目を白黒させて固まってるけど、お父さまはお構いなしにカズのことも抱きしめてる。
「だから安心して、ゆっくり休んでおいで」
「はい」
「ただ、落ち着いたら必ずお父さまのところに帰ってくると約束しておくれ」
「ふふっ…はい、必ず…」
今の今まで頼りがいがあってすごくかっこよかったのに、急に情けない声を出すから、つい笑ってしまった。
「約束します。ありがとう、お父さま…」
ぎゅっと抱きしめ返すと、お父さまの腕の力が強くなった。