第15章 おとぎのくにの 7
お父さまは私たちのやり取りをとても優しい目で見守っていた。
カズの態度は侍女としてはダメなものだろうけど、お父さまも不敬だなんて怒ったりしない。
養子として籍は入れていないけど。
元からカズのことを可愛がってたし、お父さまの中ではもう完全にうちの末娘扱いなんだろうな。
席を立って近づいてくると、私と一緒になってカズの頭をぽんぽんと撫で出した。
カズはびっくりした顔をしたけど、じっとしてされるがままになってる。
「私も可愛い娘たちと一緒に行きたいなぁ…」
お父さまは私たちを見つめながら深いため息を吐いた。
「でもどうしても仕事が休めなくてな…」
お父さまは本気で悔しそうだが、お城での仕事が忙し過ぎて領地のことは一番上のお兄さまにほぼ全て任せていると聞いている。
それくらい忙しいんだから、やっぱりそう簡単には休めないんだろう。
「だから領地に着いたら手紙を出してくれないか?向こうでの生活の様子を教えてほしいんだ」
手紙か…
手紙なんて家族に向けて書いたことないからちょっと不思議な感じがする。
家族に書いたことないっていうか、ショウにしか書いたことがないだけなんだけど…
ふいにショウとの手紙のやり取りを思い出してしまって胸がキュッと締め付けられた。
そんな私の表情の変化を見て、お父さまとカズの顔が心配そうに曇る。
だめだめ!早く忘れなきゃ!
慌てて首を振ってショウのことを無理やり頭から追い出して。
改めて目の前のお父さまに向き合った。
「わかりました!たくさん書きます!」
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
「お父さまもお返事をくださいね?」
「もちろんだ」
返事をねだったらお父さまは嬉しそうに笑って。
ぽんぽんと今度は私の頭を撫でてくれた。