第15章 おとぎのくにの 7
「私、領地へ行きます」
「サト…」
そう宣言したら、お父さまは安心したような、それでもやっぱりさみしそうな、何とも複雑な顔になった。
「カズはどうする?」
私が行くと言えばカズも絶対ついてきてくれるだろうとは思ってた。
それでも一応確認しておこうと聞いてみたら、カズはサーっと青ざめて。
「ま、まさか私を置いていくおつもりなんですか?!」
「え?いやいや、そんなわけ…」
泣きそうな顔で迫ってくるから慌ててしまった。
カズをこの屋敷に置いていく気なんて全くない。
もしカズが嫌だって言うなら説得するし、本気で嫌なら領地行きをやめようと思ってる。
「…っ私はサトさまと一緒に行きます!どこへだってついて行きますから!」
でもそう説明する前にカズは叫ぶようにして言い切った。
ふるふる震えて、その目からは今にも涙が溢れそうだ。
「サトさまと離れるなんて絶対イヤです!」
「私の言い方が悪かったね、ごめんね」
手を伸ばしてカズの目の端に浮かんだ涙を拭ってから抱きしめると、カズはぎゅっとしがみついてきた。
しっかり者のカズだけど、こういう姿を見るとやっぱりまだ幼いなって思う。
可愛い可愛い私の大切な妹。
「置いてくわけないよ、私だってカズと離れたくないもん」
「サトさま…」
「一緒に行こう。ついてきてね、カズ」
「はい…もちろんです…」
よしよしと頭を撫でると、カズはホッとしたのか強ばってた体の力を抜いた。