第15章 おとぎのくにの 7
その証拠に、私の質問にお父さまはものすごく渋い顔になった。
「本当は外になんて出したくない…どこにも行かず、ずっと私のそばにいてほしいと思っている…」
本当に嫌だと思ってるのが表情からも声からも伝わってくるけど。
「でも今はこの屋敷に居るのも辛いだろう?」
お父さまはそう続けて、心配そうに私を見つめた。
「そんなこと…」
これ以上心配を掛けないためにも否定しなくちゃと思うのに、私はないって言えなかった。
だってお父さまの言う通りだったから。
お父さまは私が部屋から出ていないことを当然知っていて。
その理由も察しているのかもしれない。
ほかの使用人たちの目を避けているのもある。
でもそれ以上にこの屋敷にはショウたちと過ごした楽しい思い出があり過ぎて。
どこに行ってもショウのことを思い出してしまって辛いんだ。
「カズも…」
お父さまが心配そうな目をカズにも向けて。
つられるように私もカズを見て、ハッとした。
カズがぎゅっと唇を噛みしめて何かに耐えるみたいな顔をしていたから。
それは見間違いかと思うほどほんの一瞬のことで。
「いいえ、旦那さま。私は大丈夫です」
カズは綺麗な微笑みを浮かべてお父さまに答えた。
でもそんなの嘘だよ。
部屋に閉じこもって何も見ない聞かない状態で思考まで放棄してる私と違って。
私に付き合ってこの部屋にいることが多いとはいえ、カズには仕事がある以上この部屋を全く出ないなんて無理だ。
立場的に私には何も言えなくても、同僚であるカズにはみんな遠慮なんてしないだろう。
カズは私が感じた視線なんか比じゃないくらいの好奇の目に晒されていたのかも。
聞きたくもない噂話が聞こえたり、もしかしたら直接不躾な質問をされたりもしたかもしれない。