第15章 おとぎのくにの 7
「領地へ?」
何もすることがないままぼんやりと日々を過ごしていたある日、ふらりと私の部屋を訪ねてきたお父さまは、私とカズと3人でお茶をしながらおもむろに切り出した。
しばらく領地へ静養しに行かないか、と。
「そうだ。王都からは少し遠いが、自然が多くのどかな良いところだよ。華やかさはないが、空気も水も食べ物も美味いし、治安もいい」
お父さまは領地のことを説明してくれるけど、私は驚いてしまっててお父さまの言葉が全然頭に入ってこない。
カズも目を丸くして固まっている。
それくらいお父さまの発言は私たちにとって意外なものだった。
「……私たち、屋敷の外に出てもいいのですか?」
今まであんなに頑なに外に出してくれなかったのに?
男だと分かったからもう心配する必要がないのかと捻くれた考えが一瞬浮かんで。
すぐにそんな訳ないと自分の考えを否定する。
お父さまもお兄さまたちも、私たちが男だと分かった後もみんな変わらない愛情を注いでくれている。
みんな忙しいのに、時間を作ってはお菓子やら花やら手土産を持って顔を見せに来てくれて。
遠くに住んでいてどうしても急いで帰らなきゃ行けなかったお兄さまたちは、手紙や贈り物を送ってくれた。
大切に思ってくれているのは疑いようがない。
そこには間違いなく愛がある。
だからきっとこの提案も純粋に私たちを案じてのものなんだろう。