第15章 おとぎのくにの 7
婚約がなくなっても、まだ学ぶことはあるはず。
でもあれ以来、全ての講義がお休みのままだ。
たぶんお父さまの指示だろう。
私のことを心配する気持ちからの配慮なのは分かってる。
でも今は、苦手だった勉強でも何でもいいから講義を受けたかった。
そうしたら、その時間はうっかり余計なことを考えずに済むから。
それに、何もしないでいると不安だった。
もう勉強なんて私のこの先に必要ないって言われてるみたいで。
……いや、本当に必要ないのかもしれないな。
だって、ショウとの婚約は白紙になった。
そしてショウだけじゃない。
きっと私はこの先誰とも結婚出来ないだろう。
以前家庭教師から、貴族の娘としての1番大きな仕事は結婚だと聞いたことがある。
家のためになる相手と婚姻を結び、家をより発展させることだと。
話を聞いた時はうまく想像出来なかったけど、その後ショウと出会って婚約して。
この人と結婚して、家庭を築くんだって。
自分の両親みたいな仲の良い夫婦になりたい、なんて幸せな未来を思い描いて。
それで大好きな家族の役にも立つんだって。
そう思ってたのに。
それが果たせない私はどうしたらいいんだろう。
お父さまはいつまでもこの家にいればいいと言ってくれたけど、それはいつまで?
私は一生この部屋にいるの?
外の世界を知らないまま、何もせず何も出来ずに、ずっと、ここに?
そんな役立たずに存在価値はあるのかな…
ああ、胸が痛くてうまく息が出来ない。
胸元をぎゅっと押さえてみても痛みが消えることはない。
これ以上何も考えたくなくて。
強く目をつぶって、眠気に任せ夢の世界へ逃げることにした。