第15章 おとぎのくにの 7
食べ終わるとカズは仕事に戻ってしまった。
ソファに1人残された私は再び背もたれにもたれかかった。
お腹が満たされたからか、ちょっと眠い。
我ながらだらしないと思うけど、でもやることがないんだよね。
部屋の外には出たくない。
でも部屋の中で出来ることなんて限られてて。
読書は元々あんま好きじゃないし、刺繍をする気にもならない。
何気なく前は何をしていたんだっけと考えてしまって。
ショウのことを思い出して、胸が痛くなった。
ああ、だから何も考えないようにしてたのに…
後悔したけど、遅い。
ほんのちょっと前まで、私の生活の全てにショウの存在があった。
毎日のようにショウに手紙を書いて、ショウからの手紙を何度も読み返して。
遊びに来てくれる日が決まれば、その日を楽しみに何日もかけて準備をして。
王家に嫁ぐための勉強や、初めての舞踏会に参加するために学ばなくちゃいけないことや準備しなきゃいけないことがたくさんあって。
忙しくて大変だったけど充実してた日々。
私の心の真ん中にはいつだってショウがいた。
だけど、婚約が白紙になって。
心の中からショウの存在を消さなきゃいけなくて。
そうしたら、胸にぽっかり大きな穴が開いてしまった。
目に見えないその穴は塞がることがないまま、今もジクジク痛み続けてる。