第15章 おとぎのくにの 7
よし!と気合を入れて、もたれていたソファの背もたれから体を起こす。
カズの手から皿を取り上げると、私が食べると思ったのかカズは嬉しそうにパッと顔を輝かせたけど。
何も言わずに皿をテーブルに置いて、カズの細い手首を握った。
「サトさま?」
キョトンと首を傾げるカズに構わず、そのままぐいっと力いっぱい引っ張れば
「ひゃあっ!?」
カズは抵抗する間もなく、小さな悲鳴をあげながら倒れ込んできた。
抱きとめたカズは悲しくなるくらい軽くなってて、一度ぎゅっと抱きしめてから私の隣に座らせる。
皿の上の真っ赤なイチゴにフォークをさすと、状況を把握できずにワタワタしているカズの口元に差し出した。
「…サトさま?」
「食べて」
「え?」
「カズが食べたら私も食べるから」
「え…でも…」
「カズが食べないなら私も食べない」
「そんな…」
カズはごちゃごちゃ言うばっかりで全然食べようとしないけど、私に引く気はない。
「カズが私を心配してくれるのと同じくらい、私もカズのこと心配してるんだよ?」
「ありがとうございます…でも…むぐっ」
このままじゃいつまで経っても食べないと思って、何か言いかけたカズの口に問答無用でイチゴを押し込んだ。
恨めしそうな顔をしながらも、もぐもぐと口が動くのを見て、ちょっと安心する。
「もうっ、サトさ…むぐっ…」
文句を言おうと開けた口に今度はオレンジを押し込む。
一生懸命口を動かすカズが可愛くて。
「ちょっ…むぐ……サトさ…むぐぐ……」
調子に乗ってカズが口を開く度にひょいひょい食べさせてたら、カズが怒った。
「もう!サトさまが食べてください!口開けて!」
私からフォークを奪い取って、ぷりぷりしながら食べさせてくれる。
それを素直に食べつつ、隙を見てはカズにも食べさせて。
そうやって食べさせ合ってるうちに皿は空になった。
カズは不満げだったけど、私は満足だ。