第15章 おとぎのくにの 7
カズが笑顔を浮かべているから。
今までと変わらない振る舞いをしているから。
心配はしていても、何となく大丈夫な気がしてしまうんだと思う。
でも私には分かる。
すごく無理してるって。
あの綺麗な笑顔は作りものだって。
笑ってるように見せるため細められた瞳の奥に、深い深い悲しみが隠されているんだって。
本当はカズだって私と同じくらい傷ついてる。
もしかしたら私以上に心に深い傷を負っているかもしれない。
あんなことがあって、ショックを受けなかったわけがない。
それでも、周りに、私に、心配を掛けないように微笑み続けるカズ。
本当は無理して笑わなくていいよって言いたい。
仕事なんてしなくていい。
何もしないでゆっくり休めばいい。
でも、きっと今まで通り振る舞うことで自分を保っているんだと思うから。
だからやめろって言えない。
無理にやめさせたらカズがどうなっちゃうか分からないから。
でも心配だよ。
この短期間でカズはすごく痩せた。
化粧で誤魔化してるけど顔色だって良くない。
私のことはすごく心配してあれやこれやと食べさせようとするくせに、きっと自分はちゃんと食べていない。
私も食欲なんて全くないから気持ちは分からなくもないんだけど。
ぼんやりしてるだけの私と違ってカズは休むことなく動き続けてるから、倒れてしまうんじゃないかって心配なんだ。