第15章 おとぎのくにの 7
事情を知っていた関係者たちは、お父さまと話した後、すぐ私とカズのところに謝りに来てくれた。
謝罪と共に処罰を望む者も少なくなかったけど、先に話していた通りお父さまは誰も罰さなかったし、私たちが責めることもなかった。
だって誰も悪くない。
悪くないどころか、むしろこの騒動に巻き込まれてしまった被害者だ。
けれど長年抱いていた罪悪感は簡単には消えなさそうで。
だから、申し訳ないと思うなら辞めないでほしいし、出来れば今まで通り自分に仕えてほしいとお願いした。
ワガママだって分かってるけど、もうこれ以上慣れ親しんだ者を失いたくなかった。
結果、1人も欠けることなく今も変わらず私の近くで働いてくれている。
色々思うことはあるだろうけど、それを私たちには全く見せることなく、今まで通りの態度で接してくれている。
それがとても有り難かった。
何を見るでもなくぼーっとしていたら、ふいに目の前に綺麗にカットされた色とりどりのフルーツの乗った皿が差し出された。
「サトさま、今日は珍しいフルーツがあるんですよ。召し上がりませんか?」
掛けられた声の方へゆっくり視線を動かすと、心配そうに私を見つめるカズと目が合った。
カズは自分で望んだ通り、養子になることなく、今も私の侍女として働いている。
他の侍女たちと同じように、何事もなかったかのような顔をしているカズ。
何も知らない人が今のカズを見ても、あんな今までの自分の人生が丸ごとひっくり返るような出来事があったなんて、想像することすらできないだろう。
事情を知る他の私付きの侍女たちでさえ、落ち着いたカズの様子に安心したみたいだった。