第15章 おとぎのくにの 7
-サトside-
ピー…チチチ…
聞こえてきた小鳥の囀りにつられるように窓の外に目を向ければ、空は雲ひとつなく青く澄み渡り、穏やかな風が木々の葉を優しく揺らしている。
誰がどう見ても気持ちの良い天気。
少し前のサトならば、こんな日に部屋に閉じこもっているなんてもったいない!と、侍女たちの目を盗んでとっくに外に飛び出していただろう。
でも今は部屋を飛び出すどころか、ソファから立ち上がる気にもならない。
くたっと背もたれに頭を預けたまま、どれだけ青い空を眺めていても、気持ちが浮き立つことはなかった。
あの日からずっと頭がぼんやりしていて。
あれからどれだけの時間が経ったのか。まだ数日なのか、もう何週間も過ぎたのかもよくわからない。
心に霞みがかかっているようで。
何もする気が起きなくて、毎日ぼんやりとただ時が過ぎるのに任せている。
お父さまから事情を知る者たちへ箝口令が敷かれ、家族と私に近い使用人以外は誰も何も知らない。
けれど、あの日以降ショウたちの訪問はなくなり、あれだけ頻繁に届いていた手紙が一通も届かなくなって。
具体的なことはわからなくても、何かがあったことは誰の目にも明らかで。
優秀な使用人たちは、もちろん口にも態度にも出さないけれど。
同情めいた視線も、ショウを非難するような空気も隠しきれてはいない。
ショウは何も悪くないのに、悪く思われているのが嫌で。
だからと言って私の口から本当のことを公表することも出来なくて。
結局人目を避けるように自室に引きこもるようになった。
ここには全ての事情を知る専属侍女しかいないから気が楽だった。