第14章 おとぎのくにの 6
それから俺は抜け殻みたいになった。
全てのことに対してやる気というものが全く湧いてこない。
婚約発表のためにがむしゃらに頑張ってきた俺の突然の変わり様に、周りの者たちは戸惑い困惑していたが、事情を知らない彼らに話せることは何もなくて。
毎日何もせずぼんやりと過ごしていたけれど、そんな俺を父上も母上も咎めることはなかった。
あんなに待ち焦がれていた舞踏会も、中止になればいいのにと半ば本気で思っていたけれど。
そんな願いが叶うはずもなく、あっという間にその日はやって来た。
さすがに舞踏会のズル休みは許されなくて。
強制的に着替えさせられ会場に引っ張りだされた。
仕方なく作り笑顔を貼り付けて、次から次からやってくる貴族たちの挨拶を受け流す。
ただただ憂鬱で。
目に映る全てのものがくすんで見えた。
そんな中、サトは当たり前のように舞踏会には現れなかった。
公爵は急な病だと説明していたけど、たぶん嘘だろう。
でも、もしかしたら心労から本当に体調を崩してしまったのかもしれない。
そうなってもおかしくないくらい、サトには衝撃的なことだったと思うから。
でもどんなに心配でも、サトの病が本当なのか嘘なのかを教えてくれる人はいなかった。
サトが苦しんでいたとしても、それを知ることさえ出来ない現実にまた打ちのめされた。