第14章 おとぎのくにの 6
「ショウは女の子だからサトちゃんのことを好きになったの?男なら嫌いになるの?」
「それは…」
違うとは言い切れなかった。
正直、そんなこと考えたこともなくて。
だってサトは女だと信じて疑ったこともなかったから。
女だから好きになった訳じゃない…と思う。
でも、じゃあ最初から男だと分かっていたら好きになっていたかは分からない。
女の子である前提でサトを好きになって。
すごくすごく好きだったから、男だと分かってもすぐに嫌いになったりも出来なくて。
むしろサトが男だなんて実感が全然ないから、まだ好きで。
そんな簡単に気持ちは変わらなくて。
だから苦しい。
「あなたたちには幸せになってほしいの。政略結婚じゃなくて、本当に好きな人と結婚して幸せになってほしいのよ」
黙り込む俺に、母上が真面目な顔で呟いた。
「サトちゃんとならショウが幸せになれると思っていたのだけど、ショウが子どもを望んでいるなら婚約破棄も仕方ないわね…」
母上はもう怒ってなかった。
ただただ残念そうだった。
いつの間にか俺の母上への苛立ちも消えていた。
母上は本気で性別なんて関係ないと思っていて。
俺たちのために、良かれと思って婚約させたのが分かったから。
きっと公爵夫人も同じ考えの持ち主なんだろうな。
ちょっと感覚が人と違うだけで子どもを想う気持ちは本物だっていうのは俺にだって分かる。
でもだからこそやるせなかった。