第14章 おとぎのくにの 6
「………え?」
「さっきから男だからとか男同士だからとか…男同士の何が駄目なの?」
重ねて問い掛けてくる母上は大真面目な顔をしていて。
本気で分からないと思ってるみたいで。
咄嗟に返事が出来なかった。
どうして男同士で結婚出来ないのか?
男同士の何が駄目なのか?
改めて聞かれると答えられなかった。
周りに男性同士で、もしくは女性同士で結婚している人なんていない。
それは法律で同性婚は認められていないから。
婚姻出来るのは男女に限られているから。
でも、どうして駄目なのか。
理由なんて考えたこともなかった。
「……子が望めないではないですか」
「男女の夫婦だって必ずしも子を授かるとは限らないじゃない」
とりあえず思い付いた理由を挙げてみるけど、あっさり跳ね除けられてしまう。
俺だって子どもに恵まれない夫婦がいることは知っているからそれ以上強くは言えない。
「子どもを生んでもらうためにサトちゃんと結婚したかったの?」
「違う!」
そんなこと考えたこともない。
確かに家のために、どうしても子どもが必要なことはあるだろう。
ただ我が家の場合、跡を継ぐのは長兄だともう決まっているし。
万が一、長兄に何かあったとしても俺の上にはまだ4人の兄上がいる。
俺が跡を継ぐことはないし、兄上たちの子どもも既に大勢いる。
俺に子どもは必ずしも必要なわけではないし、どうしても子どもが欲しいと思ったこともまだない。
ただ、結婚したらいずれは子どもも生まれるのだろうと。
そんな未来を当たり前のものとして考えていた。