第14章 おとぎのくにの 6
サトは俺たちがどこまで知っているのかを確認すると、自分たちも聞いたばかりだと言う話を話してくれた。
話すことがあまり得意ではないのに、一生懸命伝えようとしてくれているのが分かる。
でも、ちゃんと聞いているのに、内容がうまく頭に入ってこない。
少したどたどしいところはあるけれど、サトの言ってることは分かる。
分かるけれど、理解が出来ない。
頭がこの現実を受け入れることを拒絶しているのかもしれない。
「本当にショウのことが好きだった…ショウのお嫁さんになりたかったよ…」
でもこの言葉だけはやたらはっきり聞こえて。
胸にグサリと突き刺さった。
そのあまりの痛さに泣きそうになる。
やめてくれ!過去形にしないでくれ!
俺はまだ好きなんだ!
サトと家族になって、ずっとずっと一緒にいたいと思っているんだ!
心の中では叫んでるのに、何一つ言葉にはならなくて。
「でもダメなんだ…男だから、無理なの…私はショウのお嫁さんにはなれない…」
サトは何もかも諦めたように呟くと、泣きそうな顔で何度も謝った。
サトは素直で分かりやすいから、サトの気持ちも分かってた。
俺のことを好いてくれていたのも。
本当に婚約を喜んでいたのも。
「ショウたちは幸せになってね」
この言葉が口先だけのものではなくて、心から俺たちの幸せを願ってくれているのも。
……自分が幸せになることは諦めてしまっているのも。
分かるのに、何も言えない自分に腹が立つ。