第14章 おとぎのくにの 6
でも、程なくして公爵と一緒に現れたサトとカズは疲れきった顔をしていて。
公爵もとても厳しい顔をしていた。
さっきの父上ととてもよく似た表情だ。
そんな公爵と、公爵の後ろで笑顔も見せず明らかに普段とは様子の違う2人に、嫌でも不安と緊張が増す。
それでも、こんな時でも久しぶりにサトの顔が見れたら嬉しかった。
そしてサトも…複雑な顔をしているものの、俺に会えてどこか嬉しそうに見えた。
それだけでほんの少しだけ肩の力が抜けた。
突然の訪問だったから、サトもカズもいつものように着飾ってはいなくて。
装飾が控えめのワンピース姿で、髪も下ろしているし、化粧もしているのか分からないくらいの薄化粧だ。
それでも、とても可憐で。
色違いのおそろいの服で並ぶ2人は、今日も可愛らしい姉妹にしか見えなくて。
やっぱり男だなんて嘘だと思った。
嘘だと思いたかったのに…
4人だけになった部屋の中、怒りを爆発させてしまったジュンに、嘘じゃないと、本当に男なんだとサトは告げた。
そのどこまでも真剣な表情も声も、これが事実なんだと…本当に嘘はついていないんだと訴えていて。
俺はジュンのように怒ることも問い詰めることも出来ず、受け入れ難い話にただ呆然とすることしか出来なかった。