第14章 おとぎのくにの 6
執務室の扉を閉めると、知らず止めていた息を大きく吐き出した。
短時間の面会だったのにとても疲れていた。
予想もしていなかった話の内容に頭が混乱している。
婚約破棄…
サトとカズが男…
冗談だとしか思えないけれど、そんなことのために父上がわざわざ時間を割くわけがない。
こんな嘘みたいな話が本当だというのだろうか。
とても信じられない…でも…
堂々巡りする思考を断ち切るように一度頭を振る。
とにかく冷静にならないと…
落ち着くためにもひとまず自分の部屋へ戻ろうとしたが、ジュンは何かを考え込むように難しい顔をして立ち止まったままその場から動こうとしない。
気持ちは分かるが、いつまでもここに突っ立っている訳にはいかないだろう。
「ジュン」
移動を促すために呼び掛けると、ジュンはハッとしたように顔を上げて。
「ショウ兄さん…俺、カズに会ってきます!」
まっすぐに俺を見ると、そう言い切った。
その強い目力にたじろぎそうになる。
でも、ジュンのぐっと握りしめた拳は震えていて。
ジュンだって俺と同じなんだと。
俺より幼い分、受けた衝撃は俺より大きいかもしれないと、やっと思い至った。
「なんであんな嘘をついたのか、本当の理由はなんなのか…カズに直接聞きたい…このままじゃ納得出来ない…」
ああ、やっぱりジュンも嘘だと思ってるんだ。
そりゃあ、そうだよな。
あんな理由を、はいそうですか…なんて簡単に信じられるわけがない。
そしてジュンは嘘をついているのは父上ではなく、カズだと思っているんだ。
だから本当の答えを聞きに行くんだ。