第14章 おとぎのくにの 6
あまりにも父上が厳しい顔をしているからちょっと怯んでしまう。
「誓います!誰にも言いません!」
でもジュンは全く躊躇わなかった。
その迷いのない真っ直ぐさがジュンらしい。
俺だってここまで来て理由を聞かないなんて出来るわけないんだ。
躊躇う必要なんてどこにもない。
「私も誓います。だから理由を教えてください」
腹を括って父上を見ると、父上は俺たちの覚悟を見定めるかのように俺とジュンを交互に見比べた。
その圧にも負けずまっすぐ見つめ返していたら、先に目を逸らしたのは父上の方だった。
目を伏せて、大きく息を吐いて。
「サト嬢とカズ嬢が、実は男だったそうだ」
静かに告げられた言葉は確かに聞こえた。
聞こえたけれども。
「……………はい?」
今度こそ本当に父上の言っていることが理解出来なかった。
身構えていたのに、予想もしていなかった理由に頭が真っ白になる。
ジュンもポカンとしている。
サトとカズが男?
何の冗談なんだ?
婚約破棄なんて、俺にとってはかなり深刻な問題なのに。
その理由として、どうしてこんなあからさまな嘘をつくのだろう?
こんなのふざけているとしか思えない。
けれど、父上はこんな時にこんなタチの悪い冗談を口にするような人ではない。
今も厳しい表情のままだ。
だから混乱する。
冗談ではないのなら何だと言うのだろう?
謎かけか何かなんだろうか?
「男だから結婚は出来ない。よって婚約も破談となった」
答えを求めて父上を見たけれど、望んだ答えはもらえなかった。
「このことは限られたごく一部の者しか知らない。2人も胸に秘めておくように」
父上はもう一度釘を刺すと、疲れたように片手で顔を覆ってしまった。
「話は以上だ。下がっていい」
もう話は終わったとばかりに、もう片方の手で退室を促される。
父上にはこれ以上話を続ける気はなさそうだ。
聞きたいことは山のようにあるけど、混乱した頭ではうまく言葉に出来なくて。
「……………失礼します」
結局、同じく言葉が出ない様子のジュンを連れて部屋を出るしかなかった。