第14章 おとぎのくにの 6
ジュンに関しては、公爵にカズとの婚約を願い出たところだった。
『カズと結婚したい』
父上と母上は可愛い末っ子の願いを否定することなく、カズを公爵家の養女にした上で嫁に迎えることをすんなり認めていた。
まぁ、これはカズの身元がしっかりしていて、公爵家という後ろ盾があるのが大きかったと思うけど。
ただ、ジュンがカズの意思を尊重すると先方に伝えていたから、こう言ってはなんだけどカズの性格を考えると断られる可能性は少なからずあった。
「理由を聞かせていただけますか?」
それでもすんなり受け入れることは出来なかったらしいジュンが、父上に問い掛ける。
「やはり身分のせいですか?カズが王家に嫁ぐことを嫌がったのでしょうか?」
カズが断る理由としては、ジュンが挙げたものが妥当なところだろうと俺も思った。
でも父上は首を横に振った。
「理由は他にある。そしてショウとジュン、2人とも婚約が破談になった理由は同じだ」
理由が同じ?
思わずジュンと顔を見合わせてしまう。
公爵令嬢であるサトと侍女であるカズ。
立場の違う2人に共通する理由とは一体何だ?
もしかしたら、2人というより公爵家に何か重大な問題でも起こったのだろうか?
でもそんな話、噂ですら聞いたことがない。
いくら考えても分からない。
答えを求めて父上を見ると、父上はとても厳しい顔をしていた。
「これから話すことは口外無用、誰にも話さぬと誓えるか?」
その圧に息を飲む。
ここは父上の執務室だけど、最初から人払いされていて。
父上と俺とジュンの3人しかいない。
側近も護衛も居ないことに違和感があったけれど、このためだったのか。
そこまでしなければならないほどの話とは一体何なんだろう…