第14章 おとぎのくにの 6
-ショウside-
最近とても忙しかった。
サトに会う時間を捻り出すことも出来ないくらい忙しかった。
忙殺される日々に正直ヘトヘトだったけれど、どれもこれも全てはサトとの未来のためだったから。
だから文句も言わず頑張っていた。
サトのためだと思えばいくらでも頑張れた。
それなのに、舞踏会まであと数日と迫ったある日
「ショウとサト嬢の婚約の話がなくなった」
突然父上に呼び出されたと思ったら、なんの前置きもなくそう告げられた。
「……………は?」
本当に突然のこと過ぎて、一瞬何を言われたのか分からなかった。
婚約がなくなった?俺とサトの?
父上は一体何を言っているんだ?
この婚約にはなんの問題もなかったはずだ。
家柄も血筋も年頃も。
俺たちの気持ち的にも。
何一つ問題はなかった。
婚約が決まった時には両親とも喜んでくれたし、どこからも反対の声は上がらなかった。
………いや、サトを溺愛している公爵とサトの兄上たちはかなり渋い顔をしていたな………
でも、それだって最後はちゃんと納得して同意してくれたはずだ。
それなのに、数日後には公に発表するという今になって、どうして婚約破棄だなんてそんな話になるんだ?
意味が分からない。
理由に全く心当たりがない。
呆然としてしまってうまく言葉の出ない俺はそのままに、父上は一緒に呼び出されていたジュンに視線を移した。
「同様にジュンとカズ嬢の婚約の話もなくなった」
こちらはある程度予想していたのか、ジュンは黙って唇を噛み締めた。