第13章 おとぎのくにの 5
「ふっ…うぅ…」
涙が後から後から涙が溢れてきて止まらない。
「サトさま…」
泣きじゃくる私の背中をカズが優しく何度も何度もさすってくれる。
「ごめ…カズだって…辛いのに…」
カズだって同じなのに。
ジュンとの婚約の話がなくなって、好きな人に二度と会えなくなった。
ううん、それだけじゃない。
何も悪くないのにジュンに一方的に責められて、ひどいことを言われて。
傷ついたに決まってるのに…
「私はいいんです…私はサトさまとは違いますから…」
カズは首を横に振ると笑顔を浮かべた。
それは何かを諦めているような悲しい笑顔だった。
「違わないよ!」
「いいえ、私は元々身分が違うんです…最初からこの想いが叶うことはないって分かってましたから…」
「そんなことない!」
ジュンは本気でカズのことが好きで。
身分の壁だって乗り越えてカズと幸せになろうとしてた。
カズだってジュンのことが本当に好きで。
養女になれば、婚約出来た。
叶うはずだった。
カズが手を伸ばせば届くところまできてたのに…
「私には身分不相応な夢を見させていただきました…私はもう十分幸せです…」
夢なんかじゃなかったんだよ!
現実になるはずだったんだよ!
でも…だからこそ余計に残酷だと思う…
本人の意思に関係なく、突然持ち上げられて、そして突き落とされたんだから。