第13章 おとぎのくにの 5
沈黙の中、どれくらい頭を下げていただろう。
ショウとジュンは最後まで一言も発さず、静かに退室して行った。
扉が完全に閉まるまでは我慢した。
でもそれが限界だった。
パタンと扉が閉まると同時に足の力が抜けてその場に崩れ落ちた。
「サトさま、とてもご立派でした…でも、もう私しかいません。もう我慢しなくていいですよ…」
カズにぎゅっと抱き締められたら、張り詰めていた糸がプツリと切れて。
「ふっ…うぅ…」
ずっと我慢していた涙が溢れてきた。
「ショウ……」
こうするしかなかったって分かっていても、感情がついてこない。
悲しくて苦しくて胸が張り裂けそうだった。
本当は心のどこかでちょっと期待してた。
お父さまとお兄さまが性別なんて関係ないって、私たちが男だって変わらず愛してるよって言ってくれたから。
もしかしたら、ショウとも結婚は無理でも、これからも友だちではいられるんじゃないかって…
忘れたりなんかしないよって、言ってもらえるんじゃないかって…
……なんて図々しい。
家族とショウは違うのに。
そんな都合のいいことある訳ないのに。
でも嘘でもいいから、言ってほしかった。
だって本当は忘れられたくないよ…
もう二度と会えないなんて嫌だよ…
ずっと、ずっと一緒にいたかったよ…