第13章 おとぎのくにの 5
「でもダメなんだ…男だから、無理なの…私はショウのお嫁さんにはなれない…」
無表情だったショウの顔が泣きそうにぐっと歪んだ。
ごめんね…ショウも私のこと大切に想ってくれてるって知ってたよ…
胸が痛くて苦しい。
「ごめん、ごめんね…本当にごめんなさい…」
騙してごめん。傷付けてごめん。
こんな形で裏切ることになって本当にごめん。
でも女であるサトとカズはもうどこにもいない。
ショウが好きになってくれたサトは消えてしまった。
「私たちは最初から存在してないのと同じだったんだ…だから、もう私たちのことは死んだものと思って忘れてほしい…」
私たちと違ってショウたちには輝かしい未来が待ってる。
王子である彼らなら新しい婚約者だってすぐに決まるだろう。
「ショウたちは幸せになってね」
それは心からの願いだけど、声が震えてしまった。
ショウが口を開きかけて、すぐ閉じて。
何か言おうとしてるように見えた。
その瞳も何かを訴えているように見えた。
でも私の願望がそう見せただけかな…
結局、ショウもジュンも何も言わなかった。
言葉にならなかったのかもしれないし、そもそも何も話す気がなかったのかもしれない。
でもそれでいい。
何を言われてもきっと泣いてしまうから。
最後は笑顔で別れたい。
背筋をシャンと伸ばして、今出来うる最高の笑顔を作る。
私の後ろでカズも姿勢を正したのが気配で分かった。
「もう二度とお会いすることはないでしょう。どうかお元気で。ショウさまとジュンさまのご活躍を遠くからお祈り致しております」
もうショウとジュンの顔を見ることは出来なかった。
「さようなら。今までありがとうございました」
2人の顔を見ないまま、心からの感謝を込めて深く深く頭を下げた。