第13章 おとぎのくにの 5
「カズ…」
苦しげにカズを見つめていたジュンが、再びカズに手を伸ばしかけたけど。
「やめて!」
とっさに2人の間に割って入ってしまった。
ジュンがどんなつもりで手を伸ばしたのかは分からない。
もしかしたら単に立ち上がらせようとしただけかもしれない。
でも違うかもしれない。
さすがに暴力を振るったりはしないだろうけど、そんな簡単にジュンの気持ちが切り替わるとも思えない。
だってジュンが怒るのも無理はない。
っていうか、怒って当然だ。
それでも、もうこれ以上カズを傷つけないでほしかった。
両手を広げてカズを背中に庇う。
「カズは悪くない。悪いのは全部私だから…だからお願い。これ以上カズを傷つけるようなことしないで」
まっすぐにジュンの目を見て訴えたら、ジュンは伸ばしかけていた手を力なく下ろした。
「サトさま…」
カズが泣きそうな声を上げて背中に縋りついてくる。
ごめんね、カズ…
カズは言い訳なんてしたくないのかもしれないけど、私はこのままでいいとは思えないんだよ。
大きく深呼吸をしてから、ジュンを見てショウを見た。
「2人は王さまからどこまで話を聞いてる?」
「………婚約の話はなくなったって。サトとカズが男だからって。それだけ…」
確認するとショウが躊躇いがちに答えてくれた。
あぁ…本当に最低限のことしか聞かされていないんだ…
それじゃ何が何だか分からなくて混乱するし、とても納得なんか出来ないよね。
やっぱりちゃんと全部話そう。
例え分かってもらえなくても。
ただの言い訳だと思われたとしても。
それが大切なショウとジュンへの誠意だと思うから。
ぎゅっと拳を握り締めて、足を踏ん張る。
「今さら何を言っても言い訳にしか聞こえないって分かってる。それでも私の知ってることは全部話すから…聞いてくれる?」
2人は顔を見合わせると、すぐに頷いてくれたから。
私たちも聞いたばかりの話を2人に話すことにした。