第13章 おとぎのくにの 5
「申し訳ありません…」
「そんな…」
深く頭を下げるカズを見てジュンは一瞬言葉を失った。
それでも、私たちの態度から本当に嘘ではないと伝わったんだろう。
再びジュンの顔が怒りに染まって。
「なんだよそれ!?それじゃあ、今まで俺たちを騙してたってことかよ!?」
激昂してカズに詰め寄った。
「俺は本気でカズのことが好きだったのに!!男に惚れた俺を陰で笑ってたのか!?」
そんなわけない!!
カズがそんなことするはずない!!
反射的に叫びそうになったけど、カズにそっと腕を掴まれて。
見るとカズは首を小さく横に振った。
何も言い返すなってこと?なんで?
カズは何も知らなかったのに…
本当にジュンのことが好きだったのに…
結果的に騙していたことに変わりはないかもしれないけど、それでもわざとじゃない。悪意なんてあるはずない。
そもそもカズは巻き込まれただけで何も悪くないんだ。
その誤解だけでも解きたいのに、カズは一言も反論しなかった。
責められて当然と言わんばかりに黙って頭を下げ続ける。
「何とか言えよっ!!」
そんなカズの態度が気に食わなかったのか、ジュンがカズの肩を小突いた。
「あっ…」
そんなに力を込めているようには見えなかったけど、カズはよろけるとそのまま床にへたり込んでしまった。
「カズっ、大丈夫?」
「大丈夫です…すみません…」
慌てて駆け寄って声を掛ける。
カズは大丈夫だと言うけど立ち上がろうとはしなくて。
顔色も悪いし、心身ともにもう限界なのかもしれない。
「ジュンっ!」
さすがにショウも非難の声を上げたが、ジュンもまさか倒れるとは思ってなかったんだろう。
すごく動揺した顔をしている。
「………申し訳ありません」
そんなジュンを見たカズは、床に座り込んだまま再び頭を下げた。