第13章 おとぎのくにの 5
「嘘じゃないんだ…」
勇気を振り絞って口を開いたけど、緊張で喉がカラカラで。
何とか発した声はカサカサだった。
「え?」
よく聞き取れなかったのかジュンに聞き返されてしまったから、一度深呼吸してからもう一度口を開いた。
「嘘じゃないんだよ…」
同じ言葉を繰り返す。
「本当に男なんだ…」
さっきよりはマシな声が出たと思うから、今度はジュンにもちゃんと聞こえたはず。
「…………………は?」
長い沈黙のあと間の抜けた声を発したジュンは、呆然とした顔で私を凝視した。
ジュンの隣ではショウが同じような顔をして私を見ている。
いたたまれなくて俯きそうになるのをぐっと堪えた。
「本当に……男?」
「……うん」
「サトが…?」
「……うん」
疑わしそうに問い掛けられても、私には頷くことしか出来ない。
「嘘だろ?」
「嘘じゃないんだ…」
私だって嘘だったらどんなに良いかと思うよ。
でも、残念ながら事実だって、さっきお父さまに断言されたばかりだ。
ジュンは信じられないと言わんばかりに目を見開いて私を見ていたけど。
ふいにその視線を私からカズに移すと
「……カズも?本当に男なのか?」
静かにカズに問い掛けた。
不安そうな小さな小さな声だった。
問われたカズの瞳が悲しげに揺れて。
「………はい」
カズはそっと目を伏せると静かに頷いた。