第13章 おとぎのくにの 5
「サトもだよ!なんで今さらこんな嘘ついてまで婚約破棄しようとすんだよ!?一体何が不満なんだ!?」
ジュンの怒りは収まらず、今度はその矛先が私に向く。
でも何も答えられない。
だって嘘なんてついてないし。
ショウに対して不満がある訳でもない。
私だって本当は婚約破棄なんてしたくないよ…
思わず口にしてもどうにもならない本音が溢れそうになって、ぎゅっと唇を噛んだ。
「ショウ兄さんとお互い想い合ってて…婚約が決まってすごい幸せそうだったじゃん!それなのに、なんでっ…」
「ジュン、少し落ち着け」
怒りに震えるジュンを宥めるように、ショウがその肩を掴むけど。
「落ち着けるわけないだろ!兄さんはなんで怒んないんだよ!」
その手を振り払って、ジュンはショウにも噛み付いた。
でもその横顔は怒っていると言うより、今にも泣き出しそうに見えて。
本当は怒ってるんじゃなくて傷付いてるんだって分かってしまって。
申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
ごめん…本当にごめんね…
本当は否定したい。
嘘だよって言いたいよ。
でも事実を伝えなきゃね。
もっと傷付けることになるかもしれないけど、嘘をついても現実は変わらないから。