第13章 おとぎのくにの 5
4人だけになった部屋の中には、なんとも言えない緊張感が漂っていて。
誰も動かないし、口を開こうともしない。
こんなんじゃダメだって。
ちゃんと話さなきゃって。
分かってるけど、どう話を切り出したらいいのか分からない。
そんな中、ぎこちない笑顔を浮かべて最初に口を開いたのはショウだった。
「……久しぶり、サト。カズも…」
「うん…久しぶり…」
「……元気にしてた?」
「うん…ショウたちも…?」
「……うん」
ぎくしゃくと当たり障りのない会話を交わしたけど、またすぐに沈黙が戻ってきてしまって。
どうしようと思っていたら、次に口を開いたのはジュンだった。
「カズ」
「……はい」
ジュンはまっすぐにカズを見つめる。
「婚約の話、聞いたよ」
「……はい」
カズは婚約という単語を聞くと深く俯いてしまった。
私の婚約の話がなかったことになるんだから、カズの婚約の話もなくなるだろう。
それをショウとジュンはどう聞いているのかな…
「カズの性格だから断られるかもとは思ってた。無理強いはしない、カズの意思を尊重するって決めてたから…だから断るのはいいんだ…」
ジュンは淡々と続ける。
なんだかジュンらしくない何かを抑えているような声で。
「でもさ…断るにしても、もっと他に言い訳はなかったの?」
固く握りしめた拳がワナワナと震えている。
「何?男って…男だから結婚出来ないって…」
ああ、王さまは事実をそのまま伝えたんだ…
それをジュンは信じてない。
断るための適当な嘘だと思ってる。
「ふざけてんのかよっ!つくならもっとマシな嘘つけよっ!」
抑え込んでいた怒りが爆発したようにジュンが怒鳴った。