第13章 おとぎのくにの 5
応接間では、ショウとジュンが座りもせず落ち着かない様子で待っていた。
私たちが入室するとハッと顔を強ばらせて、何とも言えない複雑な顔でこちらを見た。
ショウの視線はまっすぐ私に向いていて。
その瞳には、怒りや悲しみ、困惑…色んな感情が入り混じっているように見えたけど。
でもその中に喜びの色もある気がして。
気のせいかもしれないけど、もし私と会えたことを少しでも喜んでくれているのなら嬉しいと思った。
私はこんな状況でも久しぶりにショウに会えて嬉しかったから。
「お待たせしてしまい申し訳ありません」
深々と頭を下げて謝罪するお父さまに合わせて、私たちも頭を下げる。
「いや、こちらこそ突然押し掛けるような真似をして申し訳ない」
ショウは私たちに頭を上げるように言うと逆に自分が頭を下げた。
「ただ、父上から話を聞いて居ても立ってもいられなくなって…非礼を許して欲しい」
苦しそうな声に胸がぎゅっと締め付けられる。
「いえ、そもそもの非はこちらにあるのですから…やはり謝るのはこちらの方です…」
お父さまはもう一度頭を下げてから、2人に座るよう席を勧めたが
「すみませんが、サトとカズと4人だけで話がしたいんです。公爵は席を外してくれませんか?」
ショウは座ることなくそう告げた。
言葉は丁寧だけど、否と言わせない強さがあった。
お父さまが心配そうに私を見るから小さく頷く。
私は大丈夫。
「分かりました。失礼致します」
お父さまは私が頷くのを見ると、ショウたちに一礼して部屋の隅に控えていた執事や侍女たちを連れて部屋から出て行った。