第2章 おとぎのくにの 2
カズのことを考えてぼんやりとしていたら
「ジュン、やっぱりサトはパーティーには来れないみたいだよ」
ノックと同時にショウ兄さんが手紙を手に部屋に入ってきた。
サトを俺の誕生日パーティーに招待した返事が来たんだろう。
ダメ元での招待だったから、その言葉は予想していたけれど、どうしても落胆してしまう。
「そうですか···」
サトが来ないということは、当然侍女であるカズも来ない。
ガッカリを隠せない俺に兄さんは優しく笑いかけると
「そう落ち込むな。パーティーには来れないけど、誕生日の近くで4人だけの誕生日会をしようってお誘いを受けたよ」
サトからの手紙を見せてくれる。
そこには確かに誘いの言葉が並んでいた。
「すぐに日程を調整しよう」
「はい!」
自分でもゲンキンだと思うけど、とたんに気持ちが浮上する。
「これ、カズから」
「ありがとう」
手渡された手紙にますます嬉しさが増した。
兄さんが部屋から出ていくと、すぐに手紙を開く。
そこには新しく始まった講義のことや庭に咲いた花のことなど、本当にささやかな彼女の日常が短く綴られていた。
生まれた時からずっと屋敷から出たことがないと言うサトとカズ。
狭い限られた世界で生きているカズには、そんなに手紙に書くこともないのだろう。
それでもカズの日々の様子が伺えるこの手紙のやり取りは今の俺の一番の楽しみだった。
でも···この手紙には俺の誕生日に関することは一切書かれてない。
サトから聞いてないのか?
そんなことないと思うんだけど。
まぁ、俺も書かなかったんだけどさ。
だって自分で自分の誕生日を申告するなんて、祝えってねだってるみたいで何だか恥ずかしかったんだ。
兄さんがサトをパーティーに誘えば、自然とカズにも伝わると思ったし。
でも、こうもスルーされると、素直に誕生日だから会いたいって書けば良かったと後悔した。