第2章 おとぎのくにの 2
ージュンsideー
もうすぐ誕生日。
毎年、誕生日当日には盛大なパーティーが開かれ、集まった大勢の客たちに祝われ、山のような贈り物をもらう。
華やかな場所は嫌いじゃないし、祝ってもらえるのは単純に嬉しい。
でも今年はちょっと違った。
大勢の集まるパーティーじゃなくて、たった1人の大切な人に会いたい。
豪華な贈り物なんていらないから、彼女の口からただ一言“おめでとう”と言ってほしかった。
俺が想いを寄せるカズは、兄さんの婚約者になったサトの侍女だ。
初めて会ったとき、その可憐さにどこの令嬢かと思ったら侍女だと言うから本当に驚いた。
見た目も教養もマナーもそこらの令嬢では太刀打ちできないくらい完璧なのに、侍女としての立場を決して崩さずサトに付き従うカズ。
半ば強引に友だちになったけど、同い年の俺にも未だに敬語だし、心を許してくれているとは思えない。
会話に自分から入ってくることはまずないし、常に一歩下がったところにいる。
控えめでおとなしいカズだけど、それでも兄さんと一緒に何度も屋敷に通ううちに笑顔を見せてくれる回数は増えたと思う。
俺はカズの笑顔が大好きで。
初めて会った日、初めて笑顔を見たその瞬間に、カズのことを好きになってしまったんだと思う。
同じ日に初めて出会った兄さんとサトはあっという間に婚約した。
お互いに想い合ってるみたいだし、俺から見てもお似合いの2人の婚約は俺も嬉しい。
そしてちょっと羨ましい。
俺はそううまくは行かないだろうから。
もちろん立場的にワガママを言えば通ると思う。
でも、それじゃあカズの気持ちは分からない。
命令されたらカズは従うしかないんだから。
俺は、強制じゃなくてちゃんとカズの意思で、俺のことを好きになってほしいんだ。