第13章 おとぎのくにの 5
うちまで来たということは、ショウたちも王さまから婚約破棄の話を聞いたんだろう。
ショウたちとは、いずれちゃんと会って話すことになるかもしれないとは思っていた。
ただこんなに早くその時がやって来るとは思ってなかった。
ショウたちがなんの先触もなくやって来ることなんて、今まで一度もなかった。
そんな最低限の礼すら忘れてしまうほど、ショウたちも動揺してるってことなのかな…
「その、お二人共ものすごい剣幕でして…」
執事は私の性別や婚約の件については何も知らないはずだ。
彼からしたら、突然王族が何の連絡もなく屋敷に押しかけてきたことに驚いただろう。
どんなに礼に欠ける行動であろうと、ショウたちに対して一使用人が文句を言えるはずもなく。
人払いをされているのを分かった上で、こうして知らせに来たんだろう。
正直、まだ現実を受け入れきれてない状態だから、ショウと会う覚悟なんて出来てない。
でも私たちに会わないっていう選択肢はないよね…
「分かった、すぐに行こう」
「応接間でお待ちいただいております」
お父さまがため息を吐きながら席を立つと、執事は目に見えて安堵の表情を浮かべた。
「行こう、サト、カズ」
「はい」
握ったままだったカズの手を引いて、部屋を出るお父さまの後に続く。
カズは青ざめた顔を強ばらせてるけど、私も似たようなものだと思う。
あんなに会いたかったショウに会えるのに、全然嬉しくない。
緊張で今にも倒れそう。
でも逃げるわけにはいかない。
きっと会うのはこれが最後だから。
ショウに会うって分かってれば、もっと着飾っておいたのにな…
最後は可愛い姿でお別れしたかったな…
“最後”
その単語に胸がぎゅっと痛んだ。