第13章 おとぎのくにの 5
「誰にも罰なんて与えないでください。私は皆に今まで通りでいてくれることを望みます」
誰かを責めても、罰を与えても、現実は何も変わらないのだから。
もしかしたら彼らにとっては罰を受ける方が楽かもしれない。
償う手段が与えられない方が辛いかもしれない。
それでも今までだって悩み苦しんできたはずの彼らは十分罰を受けてると思うんだ。
ずっと背負ってきた重荷をやっと下ろせたんだ。
もう楽になってほしい。
私がそう言うと、お父さまは少しホッとしたように見えた。
「そうか…ありがとう、サト。皆にはそのまま伝えよう」
「はい」
カズも安心したように小さく息を吐いた。
「あとは…」
続けてお父さまが何か言いかけた時、ドンドンドンと扉が強めにノックされた。
「…なんだ?」
お父さまが怪訝そうに眉を顰める。
「何かあったのでしょうか?」
あまりないノックの音にちょっと不安になる。
「………入れ」
「お話中失礼致します!」
お父さまが答えるのとほぼ同時に、慌てた様子の執事が飛び込んできた。
「…人払いをしていたはずだが?」
「申し訳ありません!重々承知しております!ただ…」
不機嫌な顔を隠そうともしないお父さまに執事は平身低頭する。
それでも口を閉ざそうとはしない。
「ショウ王子とジュン王子が突然いらっしゃって、サトさまとカズに会いたいと…」
必死な形相で伝えられた内容に驚く。
「ショウたちが…?」
ショウの名前に心臓がドキッと跳ねた。