第13章 おとぎのくにの 5
「誰も責めませんし、恨んでもいません」
私を取り上げてくれた医師は今も私の専属医で。私を本当の孫みたいに可愛がってくれる優しいおじいちゃんだ。
乳母はもう辞職してしまってこのお屋敷には居ないけれど、幼い私を育ててくれたのは彼女で。私のもう1人のお母さまだと思ってる。
侍女長は私の専属ではないのに、いつだって私のことを気にかけてくれていた。屋敷中の侍女たちを束ねる忙しい立場なのに。
3人ともいつだって私のことを気にかけ見守ってくれて。
仕事として以上の愛情を持って私に接してくれていた。
彼らの立場ではお母さまの命令に逆らうことは難しかっただろうと思うし。
何よりも、みんな私の大切な人たちだ。
彼らを罰するなんてしたくない。
「お父さまのことも…お母さまのことだって恨む気持ちはないです」
お母さまは本物のお姫さまで。
王さまを始めとする他のご兄弟と年が離れた末妹で。
それはそれは大切に可愛がられて育ったそうだ。
だからなのか元々の性格か、ちょっと浮世離れしたところがあるというか、色々ぶっ飛んでいるところがあるというか…まぁ、そんな人なんだけど。
だからこんなことしちゃったんだろうけど。
それでもお母さまが私に注いでくれた愛情は嘘じゃない。
心から愛して大切に大切に育ててくれた。
私が憎くて、苦しめたくて性別を偽ったわけじゃない。
本当にただ純粋に娘が欲しかっただけなんだろうと思う。