第13章 おとぎのくにの 5
「私はどんな罰でも受ける覚悟で臨んだんだがな…」
お父さまが少し気が抜けたように呟く。
その呟きを聞いてさーっと血の気が引いていくのが分かった。
正直自分のことだけで頭がいっぱいで、そこまで考える余裕なんてなかった。
ちょっと考えれば分かることなのに。
性別を偽って嫁ぐなんて…そんな王家を騙すような真似をして許されるはずがない。
その責任を負うのはお父さまだ。
もしかしたら領地没収や爵位剥奪…最悪、処刑されていたかもしれない…
私1人の存在のせいで大切な家族や使用人たちにまで害が及ぶかもしれなかったんだ。
改めて事の重大さに気付いて体が震えた。
「ああ、そんな顔をするな」
そんな私を宥めるようにお父さまは微笑んだ。
「大丈夫だ、我が公爵家へのお咎めは何もない。私やサト個人にもだ」
王さまが寛大な方で本当に良かった。
これ以上私のせいで苦しむ人を増やさずに済んだのだから。
王さまに心から感謝する。
「ただ、婚約の話は白紙になると思う…王子たちには王から伝えてくださるそうだ」
「……はい」
それはもう仕方がないことだ。
むしろそれだけで済んで良かったと思うべきなのだろう。
私の胸がどんなに痛くても。
そんなの関係ない。
「だがなぁ…」
お父さまが困ったように続ける。
「王妃さまは婚約を破棄することに納得なさらなくてね。王妃さまから連絡を受けたうちの奥方も城へ乗り込んで来て、2人がかりで陛下に詰め寄っていたよ」
ああ、それでお母さまがこの場に居なかったのか…
「私は早くサトに話をしなければと思って、先に失礼してきたんだ」
もしかしたら、お母さまたちはまだ王さまと話しているのだろうか。
私たちの婚約をとても喜んでいたお母さまと王妃さま。
お1人であの2人のお相手をしている王さま…大変だろうな…