第13章 おとぎのくにの 5
「もし、今から過去を選び直せると言われても、私は同じ道を選びます。私はサトさまにお仕えできて本当に幸せなんです」
カズの気持ちはとても嬉しい。
その言葉に嘘はないと思う。
「でも…」
それは他の世界を知らないからそう思うんじゃないかな…
最初から選択肢がある状態だったら同じことを言ったかな…
「カズの幸せは他にもっとあったかもしれないのに…」
カズに対する申し訳ない気持ちが消えなくて。
ついポツリとこぼしてしまったら、カズの顔が悲しそうに曇った。
「……サトさまには私なんて必要ないですか?私が男として別の人生を歩んでいた方が良かったですか?」
「そんなことない!私にはカズが必要だよ!」
カズが泣きそうになってて慌ててしまう。
カズにより幸せになって欲しかっただけで、私にはカズが必要だ。
カズが居なければいいなんて、一度も思ったことない。
「今までも…これからだって…!」
申し訳ないと思ってるのに、これからもカズには一緒にいてほしいんだ。
誤解してほしくなくて必死になっていたら、カズは安心したように表情を緩めた。
「私も同じです。私にもサトさまが必要なんです」
カズの言葉はどこまでもまっすぐで。
「男としてサトさまのいない人生を生きるなんて想像もしたくありません。私の幸せはサトさまのお側で、サトさまと共に生きることです」
それがカズの本心だと分かったから、もう反論はしなかった。
私がどんなに罪悪感を抱いていたとしても、それがカズを否定していい理由にはならない。
それに、勝手なこと言ってるって分かってるけど、私だってカズと離れるなんて考えられないんだ。