第2章 おとぎのくにの 2
「4人だけの時は友だちなんだから···友だちの誕生日をお祝いするなんて当たり前のことでしょう?カズはジュンのお祝いしたくないの?」
「···したい···です」
許されるならば、私だって大切なジュンさまの誕生日を祝いたい。
「ジュンだってカズにお祝いしてもらったら喜ぶよ」
「そうでしょうか?」
「うん!絶対喜ぶ!」
サトさまの力のこもった言葉と優しい笑顔に勇気をもらう。
「でも···一体何を差し上げたらいいのでしょう?」
「心のこもった贈り物ならば、どんなものでも喜ばれるよ。一緒に考えようね」
サトさまに相談しながら悩んで悩んで。
白いハンカチに、ジュンさまのイニシャルを刺すことに決めた。
習い始めたばかりの刺繍はまだそんなに上手ではないけれど。
一針一針、心を込めて丁寧に。
伝えられない想いを全て針に乗せた。
刺繍が得意なサトさまにも時々見ていただきながら、毎晩少しずつ少しずつ縫い進めて。
ジュンさまがいらっしゃる前の晩に、無事完成させることが出来た。
世界に1つだけの贈り物。
少し歪で、お世辞にも綺麗とは言えないけれど、心だけは重すぎるほど込めた。
受け取ってもらえるかな。
それ以前に、本当に私も誕生日会に参加していいんだろうか。
不安は消えなくて、その夜はなかなか眠れなかった。