第13章 おとぎのくにの 5
『成長したサトさまがご自分のお体に疑問を持たないように』
これが乳母が挙げた1つ目の理由。
幼い頃はよくカズと一緒に湯浴みをしていた。
その時は何にも考えていなかったけど、確かにカズの体は私と同じで。
侍女たちと違うことには気付いていたけど、さすがに侍女たちの裸を見たわけではないし。
シルエットの違いは単純に大人と子どもの差だと思っていた。
だって歳の近いカズが私と同じだったから。
だから体の作りから性別を疑問に思ったことなんてなかった。
そして2つ目の理由は…
『いつか真実を知った時、同じ気持ちを分かり合える存在が絶対に必要だと思うのです』
その通りだった。
子どもの時からずっと一緒で。
妹のようであり親友でもある、大切で大好きなカズ。
突然こんな何が何だか分からない状態に陥っても、カズがいたから…
カズが一緒だったから…
だから心強かった。
『この子が…カズが、サトさまの支えになりますように…』
乳母の言う通りだった。
私にはカズが必要で。
カズの存在が私の支えだった。
………でも、カズは?
私のために女として育てられることになったカズ。
そりゃ、私だって自分で女になりたいと言ったわけじゃない。
親に勝手に人生を決められてしまったのはカズと一緒だ。
でも自分のことは仕方ないと思ってる。
お母さまが私を娘として育てると決めた時点で、もう誰にもどうしようもなかったと思うから。
でもカズは、私がいなければ最初から男として生きていけた。
私のせいでカズの人生が歪められてしまったんだ…