第13章 おとぎのくにの 5
「サトが生まれる時、カズの母親にはサトの数ヶ月前に生まれた娘がいた。だから乳母に選ばれた」
カズに姉がいることは知っているけど、私は会ったことがない。
でも記憶にないだけで、私が赤ん坊のうちはカズの姉と乳姉妹として育てられていたそうだ。
そして、私が乳離れするとすぐに乳母は辞職してカズの姉を連れて自宅へ戻った。
それは乳母の子が娘だったから。
私が成長した時に体の作りの違いに疑問を持たないように、まだ何も分からないうちに本物の女の子を私から遠ざけた。
自宅に戻った乳母はしばらくすると再び妊娠して。
やがて生まれたばかりの男の赤ん坊…カズを連れて屋敷に戻ってきた。
『この子も女の子として育てます』
乳母は何かを決意した顔で、侍女長にそう宣言したそうだ。
もちろん侍女長は止めた。
私だけじゃなく、カズの人生まで変わってしまうからだ。
でも乳母の決心は変わらなかった。
『サトさまには絶対必要な存在です』
そう言って譲らなかったそうだ。
もしかしたらお母さまを止められなかった責任を感じてのことだったのかもしれない。
結局、乳母の熱意に負けて折れたのは侍女長だった。
乳母の提案を受け入れ、カズは私の専属侍女になるべく女として育てられることになった。