第13章 おとぎのくにの 5
お父さまは3人に聞いた話の内容を教えてくれた。
『あの日、奥さまがお産みになったお子さまは確かに男の子でした』
3人別々に話を聞いたけれど、私の性別について皆口を揃えてそう答えたらしい。
『サトさまは男です』と。
出産の場に立ち会った者たちが断言するのだから、もう間違いないのだろう。
私は男。
実感なんて何もないけど、それが事実なんだ。
受け入れられなくても認めなければならない。
自分の産んだ子が男だったと知ったお母さまはほんの少しガッカリされて、その後すぐに娘として育てると言い出したらしい。
その場での思いつきだったようだ。
『奥さまがサトさまを娘として育てると言い出した時、なんとかお止めしようとしたのですが…』
私の一生に関わることだからと、何とかお母さまが思いとどまるよう説得しようとしてくれたらしいけど。
「…彼らでは止めることは出来なかったそうだ」
お父さまが深いため息を吐く。
つられるように私もため息を吐いた。
お母さまが一度こうと決めてしまったら、他の人がどうこうすることは難しい。
それはよく知っている。
家族だってお母さまを止められないんだ。
ましてや仕える立場の彼らでは、どうすることも出来なかっただろう。
『いつか奥さまの口から旦那さまに伝えるからと口外することを禁じられ…私たちは従うしかありませんでした…』
主に命じられれば、彼らは従うしかない。
侍女長が厳選した信頼出来る侍女数名だけに極秘で事情を伝え、その数名が私の専属となり。
私は屋敷の奥深くで、まるで世間から隠すかのように育てられることになった。
しかし表に一切姿を見せないことで却って世間の注目を集めてしまい、やがて国で一番美しい令嬢だと噂になってしまう。
お母さまが事実を打ち明けることもないまま、どんどん日が過ぎていき。
彼らは罪の意識に苛まれながらも口を閉ざしているしかなかった。