第13章 おとぎのくにの 5
通されたのはお父さまの執務室。
そこにはお父さましかいなかった。
使用人はもちろん、お母さまもお兄さまたちも誰もいない。
お父さまは私たちに座るよう席を勧めると、自分も向かいに座った。
「遅くなってすまないな」
「いえ…」
向き合ったお父さまはとても疲れた顔をしていた。
もしかしたら夕べから一睡もしていないのかもしれない。
「……前置きはいらないな」
「はい」
話の内容は分かってるんだから余計な前置きなんていらない。
もう十分待ったから早く話を聞きたい。
お父さまは気持ちを落ち着けるように大きく息を吐いてから口を開いた。
「侍女長と、サトを取り上げた医師、それからカズの母親である乳母。昨日名前の挙がった3名に話を聞いたが…」
言葉を切ったお父さまにじっと見つめられ、どうしても緊張で体が強ばる。
この先を聞くのは怖い。
でも聞かないわけにはいかないんだ。
震える手をぎゅっと握り締めて覚悟を決める。
お父さまの目を見つめ返したら、お父さまは視線を逸らすようにそっと目を伏せて。
「サトは男で間違いないそうだ」
静かにそう告げた。
とても苦しそうな声だった。
静まり返った部屋にカズが息を飲む音だけが響く。
覚悟はしていたものの、お父さまにはっきり告げられるとやっぱりショックだった。
お母さまの冗談ではなかった。
本当に私は男なんだ…