第13章 おとぎのくにの 5
「今日はお休みじゃないはずです!私、働けます!働かせてください!」
必死に言い募るカズは、昨晩いつも通りにしたいと訴えた時と同じ顔をしていて。
今1人になったって休めるはずがない。
それは分かる。
でも、睡眠もろくに取れていない状態でいつも通りに動けるとも思えない。
他の侍女たちも困った顔をしている。
きっとカズを休ませるようにお父さまから言われているんだろう。
「それじゃあ、カズはずっと私と一緒にいて。私と一緒に過ごすことが今日のカズの仕事」
「サトさま…」
私だって1人になりたくない。
それがカズにも伝わったんだろう。
「はい、分かりました」
今度はこくりと素直に頷いたから、侍女たちもホッとしたようだった。
顔を洗って、カズとお揃いのワンピースに着替えさせてもらって。
食事は部屋に運んでもらった。
でも食欲なんて欠片もなくて。
果物をひと口食べるのがやっとだった。
カズに至っては水を少し飲んだだけ。
食事を下げてもらったら、もうすることは何もなくて。
カズと2人ソファに座ってボンヤリと時が流れるのを待つ。
きっと今日の予定が全てなくなったのはお父さまの配慮なんだろうけど。
今日はむしろ講義を受けたかったな。
苦手な科目だってかまわないから。
そうしたらきっと何も考えずに済んだのに…
何もすることがないと余計なことばかり考えてしまって、どんどん不安が膨らんでいってしまう。
いつもはお喋りな侍女たちも今日は口数が少なくて。
やたらと時間が経つのが遅く感じる中、やっとお父さまからの呼び出しがあったのは夕方だった。