第13章 おとぎのくにの 5
「カズ、頭を上げて?そんなに謝らなくていいから…」
「でも…私…申し訳ありません…」
「いいの。大丈夫だから、ね?」
「サトさま…」
頭を下げ続けるカズの顔を無理やり上げさせる。
昨日あんな話を聞いたばかりなんだから仕方ない。
カズが少しでも長く眠れたなら、その方がいいに決まってる。
「おはようございます、サトさま」
私たちの話し声が聞こえたのか、昨夜は居なかった侍女たちが部屋に入ってきた。
カズが寝衣のまま私と一緒に寝台の上にいるのを見ても誰も何も言わない。
「おはよう」
「少しは眠れましたか?」
「……うん」
私とカズを見る目が心配そうで。
彼女たちは全て知っているんだと分かる。
お父さまがむやみやたらに話を広げるはずないから、きっと前から知ってたんだろうな。
今ここにいる侍女たちは、みんな私が物心がつく前から私に仕えてくれているベテランばかりだもんね。
「今日の予定は全てなくなりました。講義もお休みです」
そう告げられて納得する。
だから今朝は誰も起こしに来なかったんだ。
「旦那さまは出掛けております。戻り次第サトさまと話をすると仰っていました」
「うん…わかった…」
本当はすぐにでも話を聞きたかったけど、お父さまが忙しいのはよく知っている。
仕方ないよね。
おとなしくお父さまが戻られるのを待つしかない。
「その際はカズも同席するようにと」
「はい」
カズも当事者なんだ。
一緒に話を聞くのは当然だろう。
カズも背筋を伸ばしてしっかり頷く。
「それまでは休んでいるように」
「そんな…」
でも休めと言われると、サッと顔色を変えた。