第13章 おとぎのくにの 5
お兄さまたちもお父さまの後を追って行ったけれど、私のすぐ上のお兄さまだけはその場に残った。
歳も近いし、まだお屋敷で生活しているから会う回数が多くて、1番仲良くしてるお兄さまだ。
お兄さまは皆を見送ると、足早に近づいて来て、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「サト、大丈夫か?」
「お兄さま…」
大丈夫か大丈夫じゃないかで言うと、あんまり大丈夫じゃない。
頭は全然働かないし、力が抜けちゃって上手く立ち上がることも出来ないもん。
動けない私を見かねたのか、お兄さまは私を抱きかかえるようにして立たせてくれた。
「カズは?大丈夫か?」
「……はいっ」
ボンヤリと椅子に座ったままだったカズは、お兄さまに声を掛けられてハッとしたように立ち上がった。
「サトさまっ!大丈夫ですか!?」
お兄さまに支えられる私を見て、慌てて駆け寄ってくる。
でもカズだって顔色が悪いし、足元もおぼつかない。
そうだよ。
カズだって私と同じなんだ。
昔話にはカズの名前は出て来なかったけど。
お母さまは “2人とも男の子” だって言った。
私だけじゃない。
カズも突然男だって言われたんだ。
カズだってかなりのショックを受けたに決まってる。
そもそも、最初はカズを養女に…とか、ジュンとの婚約…とか、そんな話だった。
その時点で既にカズは相当動揺していたのに。
それに加えて性別問題まで出てきたんだ。
カズが受けた衝撃は計り知れない。
それでもカズは自分より私を優先する。
こんな状況でも私の心配をしてくれるんだ。
「サトさま…」
青ざめた顔で私を心配するカズを見てたら、私ももうちょっとしっかりしなきゃと言う気持ちが湧いてきた。
だって私の方が年上だもん。
「…うん、大丈夫」
頷いて自分の足でしっかり立つと、カズはホッと安堵の息を吐いた。
そんな私たちをお兄さまは優しい微笑を浮かべて見ていた。