第13章 おとぎのくにの 5
「ドレスはレースとリボンたっぷりにして…早めにデザインを決めましょうね。善は急げと言うし明日にでも仕立て屋を呼ぼうかしら…」
「お母さまったら…」
放っておいたらどこまでも暴走しそうなお母さまに、つい苦笑してしまう。
「おい、止めなくていいのか?」
「このままだと本当に揃いのウェディングドレスを仕立てられるぞ?」
お兄さまたちは苦い顔をしてるけれど、私には止める気はない。
だってカズと合同で結婚式挙げたいし。
お揃いのドレスだって大歓迎だ。
だから私はちょっと気が早いなと思うだけ。
カズは止めたそうにしてるけどね。
ああなってしまったお母さまは、たぶん誰にも止められない。
「このままだといつ産まれるかも分からない赤ん坊のドレスまで仕立てるとか言い出しそうだな」
「それはいくら何でも気が早すぎるだろう」
お兄さまたちはヒソヒソと小声で話していたけれど、お母さまの耳にもばっちり届いたらしい。
「まぁ!サトやカズの子どもならとっても可愛いでしょうね!」
まだ見ぬ赤ちゃんを想像したのか、お母さまの目がキラキラ輝く。
お兄さまたちはしまったと言う顔をしているが、このままじゃお母さまは本当に赤ちゃんのドレスまで注文してしまいそうだ。
さすがにそれは止めようと思ったけど、予想に反してお母さまはそれ以上暴走することはなくて。
ふいに表情を曇らせると
「でもサトもカズも男の子なのよね…赤ちゃんが望めないのは本当に残念ね…」
ぽつりと、そう呟いた。