第13章 おとぎのくにの 5
私もお兄さまたちも大歓迎だけど、カズにとっては驚くどころの話ではなかったらしい。
「わ、私……」
小さな呟きが聞こえて振り返ると、カズは明らかに動揺していて。
その顔はちょっと青ざめてるし、体は小刻みに震えていて。
喜びに打ち震えた私とは、どう見ても震えの種類が違いそうだ。
「カズ、大丈夫?」
慌ててカズに駆け寄って背中をさすってみたけど、カズはそれに気付いているかも分からないような状態だ。
「私が奥さまの娘…?サトさまの妹…?」
「そうよ、こんなに可愛い姉妹の母になれるなんてとても嬉しいわ」
独り言のようなカズの呟きに、お母さまがにこにこと返事をするけど。
「一体何がどうしてこんな話に…」
混乱気味のカズには聞こえてなさそうだ。
「先走りすぎだ、カズが困ってるじゃないか」
呆然としているカズを見かねたのか、お父さまがお母さまをやんわりと窘めた。
皆が驚いている中、お父さまだけはどっしりと構えていて。
お父さまはこのことを知っていたんだと分かる。
っていうか、養女にするんだからお父さまは知ってて当たり前か。
「カズ、驚かせてすまないな。本当はこんな形で伝えるのではなく、先にカズの意思を確認するはずだったんだが…」
お父さまはカズに謝りながら、ちらりとお母さまを見て苦笑した。
それだけで、色々すっ飛ばしてお母さまが暴走してしまったらしいことが分かる。
「ここまで聞いてしまったら、皆も聞かなかったことには出来ないだろう。このままこの場で話をしてもいいかい?」
「………はい」
お父さまの穏やかだけれども威厳のある声に、カズは少しだけ落ち着きを取り戻したのか、背筋をしゃんと伸ばしてお父さまに向き直った。