第13章 おとぎのくにの 5
「どうして急にカズを養女にという話になったのか、気になるのはその理由だと思うが…」
そう言われてハッとした。
そっか、そうだよね。
私はカズが妹になってくれたら単純に嬉しいけど、理由もなく突然こんな話が出るわけない。
一体どんな理由があってカズを養女にすることになったのか、確かにそれはすごく気になる。
「実はな…」
お父さまの勿体ぶるかのようなゆっくりとした口調に、早く先が聞きたくてソワソワしてしまう。
「先日、ジュン王子からカズに婚約の打診があったんだ」
「えぇっ!?」
ジュンとカズが婚約!?
またしても驚いて大きな声を上げてしまったのは私で。
カズは驚きすぎて声も出ないのかほぼ無反応だった。
でも肩が強ばってるし、触れたままだった背中もガチガチに固まってるのが分かる。
っていうか、息も止まっちゃってるんじゃないかな。
心配になって、またカズの背中をさする。
でも無理もない。
養女ってだけでも衝撃的だったのに、その理由がまさかのジュンとの婚約話だもんね。
そりゃ驚いて息も出来なくなるよ。
私も胸がものすごい勢いでドキドキしてるもん。
「まだ正式な申し入れではない。断ってもいいそうだ。ジュンさまはカズの意思を尊重すると仰ってくださっている」
ジュンがその気になれば、カズを手に入れるのなんて簡単だ。
命令すればいいだけなんだから。
でもそうはしないで、ジュンはカズの意思を尊重しようとしているようだ。
それが私はすごく嬉しい。
それだけカズのことを大切に想ってるってことだと思うから。