第13章 おとぎのくにの 5
「ぇぇえええっ!?」
予想もしてなかったお母さまの言葉に、素っ頓狂な声をあげながら立ち上がってしまった。
倒れこそしなかったものの、椅子がガタンと大きな音を立てる。
自分でもお嬢様らしからぬはしたない行動だとは思うけれど、驚いたのは私だけではなかったようで咎める人は誰もいなかった。
お兄さまたちも目を丸くして、咄嗟に言葉も出ないようだし。
当の本人であるカズは、目も口も開けたまま固まっちゃってる。
食後で良かった。
これが食事中だったら、確実にお皿を落としてたと思うよ。
でもさ、そりゃ驚くよね。
私もめちゃくちゃ驚いてる。
だってカズも娘にするって…
それってカズを公爵家の養女にするってこと?
それってそれって…
「カズが私の妹になるってことですか?!」
「そうよ」
にこりと笑ってあっさり頷くお母さまを見て、驚きを嬉しさが上回っていく。
カズが妹になる!!
今までだって姉妹同然だったけれど、あくまで同然であって。
どうしても越えられない身分の壁があった。
例えば今だって、カズは同じ食卓につくことなく、ずっと私の給仕をしていたけれど。
これからは堂々と一緒に食べられるようになるんだ!
舞踏会もカズと一緒に参加できる!
嬉しい!!嬉しい!!
喜びが大きすぎて体が震える。
今、私1人だったら叫んだり小躍りしたりしちゃってたんじゃないかな。
それくらい嬉しい!!
「カズが妹になるのか…」
「まぁ、今までも妹みたいなものだったからな…」
お兄さまたちも驚いてはいるものの、この突然の話をすんなりと受け入れていて。
その声には喜びの色が滲んでいて。
そうだよね、お兄さまたちはカズのことも小さい時から可愛いがってくれてたもんね。