第13章 おとぎのくにの 5
和やかな空気のまま食事が終わり、もうそろそろ解散かと言う時、その爆弾は突然落とされた。
「私も舞踏会が楽しみだわ。ドレスもとても素敵に仕上がってきたし、可愛い娘たちを早く自慢したいわ」
食後のお茶をゆったりと飲みながら、お母さまが独り言のように呟いた。
本当にさりげなくて、あやうく聞き流しそうになったけど。
……娘 “たち” ?
今、娘たちって言ったよね?
一瞬、私とお兄さまたちのことを指しているのかとも思ったけれど。
どう見てもお母さまの目線は私と、私の給仕をしてくれているカズに注がれている。
確かに今日、先日仮縫いをしたドレスが完成して屋敷に届けられて。
最終確認でカズと揃って試着をして、同席していたお母さまは可愛い可愛いと大絶賛していた。
これはもしかしてもしかするんじゃないだろうか?
私の予想が当たっていたんじゃないかと、期待で胸がドキドキしてくる。
「お母さま?娘たちというのは、もしかして…」
カズも舞踏会に参加するのですか?
私はそう聞きたかったのに。
「あら、まだ話してなかったかしら?」
おっとりと頬に手を当てて首を傾げたお母さまは
「カズも私たちの娘になるのよ」
と、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。