第13章 おとぎのくにの 5
「あなたたち、サトの不安を煽ぐようなことばかり言わないの」
私たちの会話を微笑ましそうに聞いていたお母さまだけど、私の顔を見るとお兄さまたちを窘めてくれた。
お兄さまたちはハッとしたように私を見ると急に慌て出した。
「サト、ごめん!」
「そんな顔しないで!」
「だって…」
心配してくれてるのは分かるけど、具体的にイメージ出来ない私には、もう舞踏会が怖い場所だとしか思えない。
そういえば、お兄さまたちはカズが街に行く時も同じようなことを言って不安を煽っていたなと思い出す。
「舞踏会は楽しいよ!」
「今回は王家主催だから、ご飯やスイーツが美味しいはずだよ!」
取ってつけたように良いところを挙げられても今さら信じられない。
「あまり不安にさせないでくださいませ」
「…ごめんな」
文句を言いつつ頬を膨らませてみたら、隣の席に座っていた私のすぐ上のお兄さまが手を伸ばして頭を撫でてくれた。
「サトが可愛いから、どうしても心配になっちゃうんだよ…」
「大丈夫!サトのことは俺たちが守るからね!」
慌てて言い訳をするお兄さまや、自信満々に胸を張るお兄さま。
それぞれ反応は違うけれど、でもどのお兄さまからも溢れんばかりの愛は感じるから。
「頼りにしてますからね」
にっこり微笑んだら、お兄さまたちも破顔して。
任せとけ!と、力強く請け負ってくれた。